『性』と『死』を見つめて 〜 坂東眞砂子 〜
図書館通いを続けています。ちょっとある作家にハマってしまったもんで。
映画化もされましたよね、この小説2作は。そう、ハマっている作家は坂東眞砂子です。2作とも映画で観たのが先で、原作は今回初めて読みました。
どちらも日本の土地や人々にベッタリと染み付いている風習・因習・言い伝え・禁忌などをごっそり盛り込みつつ、人間が人外や鬼になっていく様が描かれています。
ジメジメと湿った日本土着の恐怖感。毎夜寝床で読みながら、随所でゾクゾクッと悪寒が走りました。暗闇を怖れ、見えない音に怖れ、他人の心の奥底に潜んだ悪意に怖れる....ヒトが持つ根源的な恐怖感を刺激してきます。
それでも寝る間を惜しんで先を読ませるんですから、娯楽小説として優秀です。映画化までされただけのことはありますね。そして、こうした湿った恐怖感がボク同様に好きな方が多いということですね。
この作家は『死』と『性』を作品の主題に据えているという評価がある。前に挙げた日本土着の恐怖感が『死』に対する修飾であるならば、『性』に対する修飾は...
作者自身の旺盛で貪欲な『性』への衝動や渇望や願いであるように思いました。
読者を惹き付ける要素としてもエロティシズムは欠かせないと思うが、作中の性描写やそれに至り、まさにまっただ中の心の描写を読むに付け、生々しい作者の渇いた表情が見えるようでした。
潤った私生活を送っていたとしても、常に『性』に対して「満たされたい、満たされない」という思いがあり、その渇きこそが作品を書き上げるエネルギーになっているようにさえ思えました。
あからさまなオンナの肉欲をくどくどしく見せつけられるようで鬱陶しくもあり、覗き見趣味的な悦びも得られたりする。つまり最後には作者の『性の渇き』に引き込まれていることになりますな。
さて坂東眞砂子という作家、そう思わせる具体的行動やその行為に対する個人的意見には触れませんが、彼女の人格は常ならぬものの様に思います。いやそんな行為が無くても充分にその文章を読んでいるだけで「物書きらしい人物」であるということが伝わってきます。
そんな色眼鏡をかけながら読むとさらにこの作家の作品が面白くなってきて...
はや4作目。そろそろあそこの図書館の蔵書は読み尽くしてしまいそうです。
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