『生存者ゼロ』 ~ 本当の謎は最後の頁に
春先にコンビニで買って以来、なんとなく読む気にならずに積んだままにしていた『生存者ゼロ』をようやく読了しました。
アフリカ大陸ではエボラ出血熱が今まさに猛威を振るい、国内ではよもやのデング熱流行で未だ予断を許さないといった時勢が、遂に本書を開かせるきっかけになったような気もします。
パンデミックによるパニック小説と予想して読み始めると、完全に裏切られるスケールの大きな作品でした。一度読み始めたら、次へ次へと止まることなく読み進めてしまいました。西村寿行の『滅びの笛』の狂気と焦燥感、『風の谷のナウシカ』というよりも、エヴァQと同時上映された『巨神兵東京に現わる』で描かれた火の七日間の絶対的な終末感。そんな作品を彷彿とさせながら一気に読了。
人類を脅かす出来事は新月の度に起こる。
終章の最終頁、最後の最後に来て最大の謎を投げかけられます。発端ともいうべき地を訪ずれるとそこには「これこそが人類の運命を決する。下弦の刻印の意味を知るべきだ」の言葉。見上げると満天の星空に月は無し。下弦の刻印?なぜ唐突にそんな言葉が?666?悪魔の刻印?一体、何を暗示する言葉なのか?皆目見当もつかない言葉でこの作品は締め括られます。読者を一気に置いてけぼりにする結末。
結末の直前に発端の地であり悲劇の根源地である彼の地から「ワクチン製造・実験用にサル輸出され、そのサルに関わった人間が未知のウイルスに感染し相次いで死亡。そして変異を重ねるウイルスへのワクチン開発も困難を極めている」というニュースが挿入されていた。
結末の夜は満天の星空なれど月は無い、つまり新月...人類を脅かす出来事は新月の度に起こる。
下弦の刻印?上弦-満月-下弦-新月。つまり本作で語られた人類存亡の危機は下弦であり、本当の終末(新月)の序曲に過ぎなかったということなのだろうか?
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