小説『雲のむこう、約束の場所』
主人公、親友、そしてヒロインの3人を翻弄する『塔』の存在が映画では難解に感じましたが、小説を読むことでようやく腑に落ちました。
この世界の夢、全人類の夢つまり今と異なる可能性が平行世界として無限に実在していて、そうした平行世界の存在を感知するアンテナが『塔』。『塔』は平行世界を感知することで未来予知を実現せんとする装置でもある。そしてその『塔』(平行世界)を司る制御装置が設計者の孫であり、この作品のヒロインであると。
小説では映画と異なり、クライマックス部分で「どの並行世界をアクティブにするか」ヒロインと主人公は一瞬迷います。全世界の未来が託される瞬間.....どこかでみたアニメ作品のエンディングを彷彿とさせます。
また映画ではきちんと回収されることのなかった『3人のその後』も小説では描かれていました。それでもなお読了後に心に去来するのは....
『あのころのぼくが必死で来ようとしていた場所が、ここなのだろうか』
物語の冒頭部分ですっかり大人になった主人公が独り言ちたセリフが象徴するように、映画鑑賞後と同じ ”せつなさ” でありました。
壮大で難解な設定の物語なのに、情感たっぷりしかも読みやすく書き上げた著者である加納新太氏は、素晴らしい書き手だと感服しました。
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