チャリで来た
「チャリでコジマの前に1時ね」
そんな提案に誰ひとり、疑問や不満の声を上げなかった。彼らに打算はない。この町から羽田までどれだけの距離があるかなんて問題じゃないのだ。大切なのはみんなが飛行機を見たいと思ったこと。
コジマの前に集まったママチャリ4台。カッコはすこぶる悪いが、みんな陸上部を支えるスプリンター、半パンから覗く日焼けした筋肉質の脚がいままさに躍動を開始する。
「この道がどこまで伸びてるのか、どんな道と交差するのか。そんなこと考えながら地図を眺めるのが好きなんだ」
そんな友達を先頭に、国道15号を彼らは流行りの曲を大声で歌いながら、飛行機が間近に見られる城南島海浜公園まで片道18キロ、ノンストップで走り抜いた。
ひっきりなしに飛来する飛行機を眺め、人工の砂浜でじゃれ合い、持ち寄ったスナック菓子に舌鼓を打つ。ただそれだけ。冒険なんて大袈裟なもんじゃなくて、天気が良かったからチャリで来た。本当にそれだけのこと。
得難い体験、得難い友達。得難い時間。彼らにとっては然もない日常、でも確かに彼らはいま、少年時代を謳歌している。彼らはこの日のこと、また思い出したりするのだろうか。遠い目をして、通って来た道を遡りながら思ったりする。
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